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神無月~霜月(4)


神無月~霜月(1)

神無月~霜月(2)

神無月~霜月(3)

の続き。

 


特徴的なYの風貌は一見してすぐにわかる。

パンチパーマに角度の付いたメガネ、長身に厳つい骨格。

まるで、一昔前のやくざである。

その外見通り、若い頃からYの短気性は親族や町内では有名だった。

そんな彼の性情も、はや年とともに和らいだ。

未だに感情的になると荒い言葉を使うこともあるが、

あくまでも周囲のことを気に掛けてのことである。

気になると放っておけないその世話焼きな性分をかわれて、

今では、町内の相談役を任せられている。

 

僕はYの車の助手席に乗り込み、病院へと急いだ。

「兄の急死から1ヶ月も経ってないのに、今度は姪か・・・」


普段、決して弱みをみせないYも立て続けに起こった変事に

さすがに精神的な疲労と動揺を隠せてはいなかった。


母が搬送されたのは、富山市内にあるS病院だった。

この病院は脳卒中の患者に特化しており、

SCU(脳卒中集中治療ユニット)を有している。

つまり脳内出血に対しては、

より多くの経験がある病院であるということになっているらしい。


Yの話によると母は朝方、故祖父の家で倒れたらしい。

右足が麻痺していたが、

かろうじて意識を保っていたため、

自ら救急車を呼び、Y宅にも電話して救助を求めたらしい。

そのとき隣には祖母(母の母親)がいたが、認知症のため、

当時の状況は覚えてはいない。


母の搬送された集中治療室は、建物脇の入口から中に入り、

突き当たりにあるエレベーターで上がった3Fにある。


僕とYが病院に着くとすでに親族の何人かが駆けつけていた。


はじめのうちは互いに気遣いの言葉を口にし合っていたが、

徐々に口数も少なくなり、

重苦しい空気が家族控え室一体を包んだ。


しばらくすると、

担当医からの説明があるとのことで、

親族を代表し、

僕とY、祖父のもう一人の弟であるHが説明を受けるために担当医の待つ個室に入った。


専門的かつ丁寧な説明だった。


病状から今後の対処方、実際の術式に到るまで、

素人にするような説明内容ではなく、

説明を受けたからといって、

こちらに諾拒の選択の余地があるわけでもないのだが、

まあそういうマニュアルになっているのだろう。


その内容は、

今日中に命の峠があるというわけではないが、

出血箇所が非常に止血処置のしにくい場所であり、

明朝の検査の結果を待って見ないと、

手術すら施せない状況であるということ、

仮に検査の状態がよく、手術できたとしても、

脳をあけてみるまで解らず、

仮に手術が成功したとしても、

その後、越えなければいけないハードルは2、3あり・・・

など。


まあ要は現段階ではなんともいえません。

みたいな説明であった。

それに対して僕たちは、


お願いします。


なんていう月並みな言葉を口をそろえて発していた。

というか、そういわざるを得させない説明なのである。


説明のあと渡されたのは、

大量の承諾書。

明朝の検査から手術にいたるまで、

一処置につき一承諾書を書かなければならないらしい。


まあわかりますけどね。


最悪の結果になった場合、

言った言わないで鬼のごとき面相をもってクレームをつけてくる御仁も

中にはいらっしゃるでしょうから。

 

先月の祖父の一件の際、母は2日間病院を離れなかった。

その末、疲労困憊した体で通夜から葬儀へと、

喪主として臨んだ。

その姿を見ていた僕たちは、

白状なようだが、

何よりも自分たちの体調を優先させることの重要性を

よく知っていた。


「先生、今夜、生死の峠がないのであれば、我々は一旦自宅に戻ります。」


「えっ?お帰りになるんですか?」


という担当医の心外そうな言葉を振り切り、

そうはいってみてもやはり後ろ髪を惹かれながら、

明日への希望を背に病院を離れた。

 

次回に続きます。

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