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祖父が教えてくれた「運がいい」という生き方

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春休み中の子どもを連れて、

久しぶりに実家へ帰りました。

昔の写真を見たいという子どもと

懐かしい写真を見ているうちに、

ふと祖父のことを思い出しました。

父方の祖父は、奈良生まれ。

104歳の大往生でした。

祖母は早くに亡くなり、

長いあいだ一人で暮らしていました。

80代になっても、

スクーターに乗って買い物へ行くような人でした。

けれど、事故でけがをしたこともあり、

さすがにスクーターを手放しました。

それから数年間、次男である父の家族、

つまり私たちと一緒に暮らしたのです。

祖父はふだん、静かな人でした。

楽しみは、テレビで野球や相撲を見ること。

当時まだ学生だった私は、

午後3時になると、

コーヒーとお菓子を運ぶのが日課でした。

いつも嬉しそうに受け取る祖父は、

「ありがとう」のひと言を欠かさない人でした。

ふだんは多くを語りませんでしたが、

昔の話になると、急に話が止まらなくなったものです。

そして、その度に口にしていた言葉があります。

「いやぁ、運が良かったんやわ」

何のつてもないのに、

運よく大手の百貨店に就職できたこと。

戦争で中国へ行っても、

運よく前線に行かずにすんだこと。

きっと、失敗も苦労も、

たくさんあったはずです。

それでも口から出てくるのは、

決まって「運が良かった」という言葉でした。

その言葉を聞くたびに、

不思議とこちらの気持ちまで

明るくなったのを覚えています。

祖父は、子どもや孫たちから慕われていました。

寝たきりになることもなく、

家族に大きな介護の負担をかけることもなく、

104歳で静かに旅立っていきました。

祖父から「ああしなさい」「こうしなさい」と

言われたことは、一度もありません。

でも、生き方そのものから、

とても大切なことを教わった気がします。

それは、自分の人生をどう受け取るか、ということです。

起きた出来事そのものは変えられなくても、

それをどう見るかは自分で選ぶことができる。

祖父はきっと、「自分は運がいい」と

信じていたのだと思います。

だからこそ、

人生の出来事をそういう目で

見つめていたのかもしれません。

そうして見つめた人生は、

やはりどこか、運に恵まれていたように思うのです。

自分自身をどう扱うかで、

出来事の受け取り方は変わっていく。

その積み重ねが、

生きる空気そのものを変えていくのだろうなと感じます。

私も、祖父のこの在り方を

受け継いでいきたいです。

何かあるたびに不安や不足を見るのではなく、

今あるものに目を向けて

「やっぱり自分は運がいい」と、

静かに思える人でいたい。

祖父を思い出しながら、

そんなことをあらためて感じた春の帰省でした。




美月マーシャ



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