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沈黙の中のまなざし──小林秀雄と近代の超克 ☆☆☆あぐりの徒然ノート☆☆☆

近代という時代は、人間を測ろうとした。
科学で、理性で、思想で。
何もかも言葉に置き換え、数式で証明し、意味を問うことが「進歩」だと信じた。
だが、その進歩の先に、どれほどの沈黙が取り残されただろうか。

小林秀雄は、その沈黙に耳を澄ました人だった。
モーツァルトを聴きながら、「あれは悲しみにも喜びにも似ているが、そのどちらでもない」と語る。
それを分析する者たちに向かって、「聴けば分かる」と、ただひと言。
それ以上の説明は不要だった。音楽は、理屈ではなく、魂に触れるものだから。

彼は言う。
「芸術は思想ではない」
「真実は説明できない」
「感じること、それがすべてだ」と。

近代が、知識を積み上げて塔を建てたのなら、
小林は、その塔の足元に咲く野の花を見つめていた。
それは名もなく、小さく、踏みつけられそうなものだったが、
風に揺れるその姿にこそ、人間の真実が宿っていると信じていた。

本居宣長に学び、「やまとごころ」を讃えたのもそのためだ。
感ずること。
もののあはれを知ること。
それは声にならぬ涙であり、名付けられぬ胸の震えである。
近代が忘れてしまった「ことば以前の心」。
それを思い出すために、小林は筆をとったのだろう。

彼にとって「近代の超克」とは、過去を捨てることではなかった。
むしろ、失われた感性を取り戻すことだった。
「無常」を忘れた知性に、「人は死ぬ」という当たり前のことを思い出させることだった。
死を見つめることは、生を見つめること。
美しさとは、そこに宿る微かな震え。
そのような感受性を、人間はまだ持っていられるのだと信じたかったのかもしれない。

世界が騒がしくなるほどに、
彼の言葉は、静かに、しかし確かに響いてくる。

感じることを、忘れないでいよう。
名付けえぬものに、まなざしを向けていよう。
沈黙の奥にこそ、真実はひそんでいるのだから。

参考文献 「モーツァルト・無常ということ」小林秀雄 新潮文庫

この記事を書いた人

あぐり

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