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2026年5月5日、己卯 立夏、蛙始鳴 空へ昇る鯉のように、いのちを立ち上げる日

暦は立夏を迎え、七十二候では「蛙始鳴」、かわずはじめてなく頃となります。立夏は、春がその役目を終え、夏の気配が静かに立ち上がる節目。田に水が入り、土は潤い、冬眠から目覚めた蛙たちが、水辺にいのちの声を響かせはじめます。まるで大地そのものが、深い眠りから目覚め、「さあ、生きよ」と告げているような季節です。

この日は、端午の節句でもあります。
「端午」とは、もともと「月のはじめの午の日」を意味しました。「端」は、はじめ。「午」は十二支の午です。やがて「午」が「ご」と読まれることから、数字の「五」と結びつき、五月五日が端午の節句として定着していきました。日本では古くから、季節の変わり目には邪気が入りやすいと考えられ、端午には菖蒲や薬玉を用いた厄除けの行事が行われてきました。中世までは、馬に関わる競技や菖蒲を飾る行事が中心でしたが、武家社会が力を持つにつれ、端午はしだいに男子の成長と武運を祈る節句として発展していきます。

江戸時代になると、武家では男子の誕生や成長を祝って、家紋を染め抜いた幟や吹流しを立てる風習が広まりました。やがて町人たちは、それを自分たちらしい形で受け取り、威勢よく水をのぼる鯉を幟に描くようになります。はじめは平面的な幟であったものが、しだいに立体的になり、風をはらんで空を泳ぐ鯉のぼりへと変化していきました。

なぜ、鯉なのでしょうか。
それは、中国の「登龍門」の故事に由来します。黄河の急流にある龍門をのぼり切った鯉は、龍となって天へ昇る――その伝説から、鯉は困難を越える生命力、試練を突破する力、そして立身出世の象徴となりました。濁った水の中でも生きる鯉の強さは、単なる成功願望ではなく、「どのような環境にあっても、命をあきらめずに泳ぎ切る力」を表しています。鯉のぼりは、子どもがただ偉くなることを願うものではなく、人生の急流を越え、自分自身の龍へと変じていくことを祈る旗なのです。

また、端午に欠かせないのが菖蒲です。
菖蒲は強い香りを持ち、古くから邪気を祓う植物とされてきました。その葉は剣のようにまっすぐ伸び、香りは清く鋭い。さらに「菖蒲」は「尚武」、すなわち武を尊ぶ心に通じることから、武家の精神とも結びつきました。ただし、菖蒲湯などに使われる菖蒲は、紫の花を咲かせるアヤメ科の花菖蒲とは別の植物です。けれど、その姿の凛とした美しさから、花菖蒲もまた端午の節句にふさわしい花として愛されるようになりました。

この日の干支は己卯。
己は、田畑の土。卯は、春に伸びる草木の気です。己卯の日は、やわらかな土の中から、若い芽が静かに伸びていくような日。派手な勢いよりも、内側にある生命力を信じて育てることが大切です。

そして月は射手座にあります。
射手座の月は、空高く飛ぶ矢のように、心を未来へ向かわせます。端午の鯉が龍門をのぼり、空へ昇ろうとするように、この日は「今の自分を越えていく力」がテーマになります。

立夏。蛙始鳴。端午の節句。
水辺では蛙が鳴き、空には鯉が泳ぎ、地には菖蒲が香る。
それは、いのちが目覚め、邪気を祓い、志を立てる日です。

今日の問いは、こうです。

あなたは、どの急流を越えて、どんな龍になろうとしているのでしょうか。

風を受けて泳ぐ鯉のように、
恐れを祓う菖蒲のように、
そして夏へ向かって声を上げる蛙のように、
今日という日は、内なる生命力をもう一度、空へ放つための日なのです。

この記事を書いた人

あぐり

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