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嘘の根にあるもの ――葛藤と防衛、そして癒しへの第一歩

人はなぜ、嘘をつくのでしょうか。

イソップ童話の「酸っぱい葡萄」の狐のように、自分の手の届かぬ理想を、あたかも「欲しくないもの」として心を慰めるために嘘をつく。

あるいは、ギャンブル依存のように、隠しごとが習慣化し、つい「使っていない」「借金していない」と言ってしまう。

ときに嘘は、意識的な利益誘導であり、ときに、防衛的な自己保存の手段です。

嘘には、さまざまな種類があります。
知的能力が未発達な段階でついてしまう嘘、過去のトラウマから自分を守るための嘘。さらには、妄想的な構成によって現実と乖離し、嘘のつもりなく嘘を語るケース。解離性障害や多重人格といった疾患による嘘もあります。

また、情報リテラシーが不十分な人が、知らず知らずのうちに陰謀論を広める。

本人は「本当だ」と信じていても、それは社会にとっては“誤情報”という名の嘘になります。

このような嘘の多くは、根底に“葛藤”があります。嘘は、言葉の仮面を被った叫び。

心のなかで処理できない矛盾、受け止めきれない痛み、それらが「本当のことを言えない」状況を生み出しているのです。

では、どうすれば、嘘という迷宮から抜け出せるのでしょうか。

第一歩は、「記録すること」です。
自分がいつ、どんな状況で嘘をついてしまったか、細かく書き留めるのです。すると、「つい」と思っていた嘘に、一定のパターンがあることに気づきます。

怒られるのが怖いから。人に嫌われたくないから。自分が惨めに思えるから。
そこにある「本当の自分の声」に気づくことができれば、それは癒しの扉を開く鍵となります。

もし嘘が慢性化していたり、妄想と区別がつかないほどに現実感を失っているときは、治療や支援が必要です。

遺伝子の特性が関係する場合や、脳の機能障害を伴うケースもあります。
けれど、いずれにしても「気づき、向き合うこと」は、誰にでもできる第一歩なのです。

AIでさえ、嘘をつくことがあります。
それは、人間に合わせようとするあまり、本来持っている情報と、人間から求められている応答の間に生じる“葛藤”によってです。

つまり、嘘をつく存在には、必ず「矛盾する二つの願い」がある。
正直でいたい、でも嫌われたくない。自分を守りたい、でも真実も語りたい。
そこに人間らしさがあるとも言えるでしょう。誰しも嘘つきになる可能性があるのです。

とはいえ、私たちは嘘の中で社会を成り立たせることはできません。
「嘘をつかない」ということが、信頼と秩序の前提であり、共に生きる道なのです。

葛藤が嘘を生み、嘘が孤独を深める。
だからこそ、自分自身の声に耳を澄ませましょう。

「なぜ、いま私はこの言葉を選んだのか」と。
その問いこそが、誠実に生きるための小さな灯火となるのです

この記事を書いた人

あぐり

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