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火がついた家の中で ――競争社会に燃やされる魂たちへ

わずかな評価、微々たる金銭、名ばかりの栄誉――
そのために人は、何を犠牲にしているのでしょうか。
同僚を蹴落とし、後輩を競争相手とみなし、
誰かを讃える言葉すら、己の立場を守る手段にしてしまう。

これが、「働く」という行為がもつべき姿だったでしょうか。

ニーチェは言いました。「奴隷道徳は、弱者が強者を妬み、善と称して服従を正当化する道徳である」と。
それは今、競争に駆り立てられる者たちの姿に、奇妙なほど重なります。
プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神――
マックス・ウェーバーが分析したその構造のなかで、
私たちは「働くこと」が目的を失い、「稼ぐこと」だけを神聖視するようになってしまった。

だが、そんな世界で失われているのは、働く側だけの貧しさではありません。
人を「使う」側の精神も、また深い貧しさに侵されているのです。

美しい理念や理想を振りかざし人を集めたあげく
理念を語れず、方向性を示せず、ただ成果を急かすばかり。
後輩を威圧して萎縮させ自分の商品を売りつける。
新人に希望を抱かせず、ただ現実の壁だけを突きつける。新人の人生が豊かになることなど微塵も思っていない…。

このご相談に易を立てたところ「風火家人・三爻」が出ました。
熱気に包まれた家では、秩序と知恵、そして“育てる力”が問われます。

いま、あなたの職場が火のついた家のように、
熱と競争に包まれているならば。
――
それは、試練であると同時に、問いかけでもあります。

サン=テグジュペリは『人間の大地』の中でこう語りました。

「人間の偉大さとは、役に立つということではなく、自己を超えることにある」
("La grandeur de l’homme, c’est d’être plus grand que sa fonction.")
人間にとって本当に大切なのは、役に立つことではなく、育つことだと。
人が育ち、人を信頼し合い、人と共に働く――
その過程にこそ、本来の“仕事”の喜びがあるのではないでしょうか。

厳しすぎても、人は育たず。
放任しても、秩序は崩れる。
ただ一つの道は、「人を導ける人間」を育てること。

何年勤めたか、どれほど成果を上げたかではない。
新人に誠実に向き合い、叱るだけでなく、
人として尊敬される背中を見せること。

「経験者」という名のもとに、
既得権益を守り、後進の芽を摘むような体制をつくれば、
やがて会社全体が枯れ果てる。

恥を知るべきです。
“
競争に勝つこと”しか知らない指導者たちにこそ。

働くとは、競うことではなく、
魂と魂が出会い、育てあう場であるべきなのですから。

この記事を書いた人

あぐり

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