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✡️✡️✡️アルカナの巫女✡️✡️✡️ — 陰陽師の末裔が教えてくれたこと

ひとりの陰陽師に出会ったことがある。
播磨陰陽師の末裔と伝えられ、静かに、しかし揺るぎない気配を纏う方だった。その方は、北海道の地に生まれた。

しかし、それは偶然ではない。明治維新の混乱の中、それまで陰陽寮に仕えていた祖先たちは、「朝敵」とされ、赤き衣を着せられ、北の大地へと流されたという。罪人として。

「四十を越えても、伝える者が現れなければ、公にする」
それが、その方が祖から受け継いだ言葉だったという。
人知れぬところで連綿と続いてきたその教えは、表に出ることを望まれなかった。

いく世代にも渡って時代の波に翻弄されてきただろう。それでも護られてきた智慧。それを、彼は静かに語ってくれた。

その教えは実に多岐にわたる。陰陽の理、霊符の作法。
けれど、それ以上に私の心に残っているのは、「人としてどう在るべきか」ということだった。

「武士道は、戦うための道ではない。日常を、どう生きるかの道なんだよ」

彼は、そう言って『武道初心集』を手に取りながら、江戸期の武士たちが一生に一度あるかないかの戦(いくさ)に備え、毎日をいかに丹念に過ごしていたかを語ってくれた。

戦のない時代においても、彼らは刀を大事にし、心を磨いたという。

日々を大切に生きること、そしていつでも「仁・義・礼・智・信・義・勇」の徳を己の中に保ち続けること――それこそが真の強さであり、人として生きる道なのだと。

『南総里見八犬伝』の物語も、彼はよく口にしていた。
「ただの冒険譚じゃない。あれは、人が何を大切にして生きるべきか、八つの徳に託して描いた教えだよ」
そうして、ひとつひとつの登場人物を通して、“心の見方”を教えてくれた。

播磨御式神内(はりまこしきうち)という武術も、教えのひとつだった。
体を鍛えること、呼吸を整えること、心を落ち着けること――。すべては心身一如(しんしんいちにょ)。
この体は、魂の神殿なのだという。

霊符を描くことも学んだ。特に、縁をつなぐ霊符は、不思議な温かさに満ちていた。
神社の参拝の所作も、ただ願いをかけるのではなく、自らを正し、神に心を向ける作法として教えられた。

彼の教えは、どれもこれも華やかさとは無縁だった。
名前が残るわけでもなく、世に認められることもない。
けれども、それでも受け継いできた祖先がいた。どんな時代にも屈せず、ただ“次の誰か”のために、火を護り続けてきた人たちがいた。

何世代にも渡って受け継がれてきた日本人の魂の美しさや尊厳がその人の中には息づいていた。
「あなたがここにいるということは、歴史の中の誰かが、祈りながら生き抜いた証なんだよ」
そう語る彼の目は、遥かな祖の時代と今をひとつに結んでいた。

派手ではないが、地に足のついた智慧。
日々を大切に生きる姿勢と、人を敬う心。
そして、自らの魂を曇らせないという、静かな覚悟。

時は流れても、真実はいつも静けさの中にある。
それに耳を澄ます心を、これからも大切にしていきたいと思う。

師へのわずかながらのご恩返しにかえて…。

この記事を書いた人

あぐり

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